TheOtherWiseMan

2023年9月23日(土)、青山学院大学ガウチャー記念礼拝堂にて、第30回青山学院大学同窓祭スペシャルチャリティステージが開催されます。


内容は、朗読劇「四人目の博士〜アルタバンの旅〜」です。https://aogaku-doso.jp/


1895年にアメリカのヘンリー・ヴァン・ダイクが書いた小説「The Other Wise Man(もう一人の博士)」が元となっています。ヘンリーは、作家であるだけでなく、長老派教会の牧師でもあったようで、この本もキリスト教精神を土台に描かれています。

以前からあらすじを知ってはいたものの、改めて英語の原作を読んでみようとアマゾンでポチッ。読んだ後、「どう生きていくべきか」また「どう生きてきたのか」を考えさせられました。

ただ、聖書を知らないと登場人物やその意味など「理解が深められないのでは?」と思いました。そこで、当ブログで『もう一人の博士』の背景にある聖書のお話を紹介したいと思います。なお小説は、『もう一人の博士』というタイトルで日本語でも出版されており、内容はそちらでご覧いただけます。

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写真:Inbal Malca on Unsplash


東方の博士たち


イエス・キリストが降誕されたクリスマスには、色々な人物が登場します。例えば母のマリア、父のヨセフ、また降誕を告げた御使いガブリエルや、野宿をしていた羊飼いなど。その中で、これらの人たちも大切な登場人物です。

“イエスがヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東の方から博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。”

マタイの福音書 2章1節

それは、博士たちです。英語では、wise menやMagiと訳されています。Magiを調べると、「(キリスト降誕の時贈り物を持ってきた)東方の三博士」や、「メディア民族の占星術師、祭司職の人」という意味もあるようです。確かに小説『もう一人の博士』の主人公「アルタバン」も、メディア人で異教の祭司職という設定で描かれています。

One Point!! 聖書は占星術や異教もOKと容認しているのではなく、異教の祭司さえも神の計画にためには用いられるという「神の絶対的権威」に注目しましょう!

博士たちは、ベツレヘム やエルサレムから見て東の方から来たとしか聖書には書いていません。古代バビロンに近いパルティアから来たとか、アラビアから来たとか、または上記のようなメディアからなど色々な言い伝えがあります。

とにかく博士たちは自分たちの地方で星が昇るのを見て、救い主であり王がお生まれになると知りました。そしてその星を見て、ただ信じ、長旅をしてエルサレムにやってきたわけです。そのような危険を冒してまでの信仰を持つことができるだろうかと、個人的に考えさせられます。

ここにもう一人の登場人物がいます。それは、当時の王様ヘロデです。救い主に期待を寄せつつエルサレムにやってきた博士たち御一行さま。ヘロデはそれを見て動揺しました。なぜなら自分が王であるにもかかわらず、王が生まれるというのですから。

こりゃいかんということで、ヘロデ王は聖書に詳しい祭司長たちや宗教学者たちを集めて、一体どこでキリストが生まれるのか調査します。すると言い伝えによると「ベツレヘム」であることがわかりました。

写真:Katherine Hanlon on Unsplash


3つの贈り物


博士たちは、ベツレヘムで生まれたイエスの元に辿り着き、ひれ伏してイエスを礼拝します。そして持って来た黄金、乳香、没薬を捧げます。

“それから家に入り、母マリアとともにいる幼子を見、ひれ伏して礼拝した。そして宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。”

マタイの福音書 2章11節


ここでも考えさせられるのは、遠くからはるばる来た博士たちは、出会ったばかりの赤ちゃんを前にひれ伏し、その方を礼拝したことです。目の前にドーンと偉そうな方が座っていたなら、ひれ伏すことがあるかもしれません。しかし、飼葉桶の上で眠っておられる赤ちゃんの前で、ひれ伏しているのです。

あなたこそ神であり、聖書の約束通り来られたメシヤ(救い主)ですと言わんばかりの振る舞いではないでしょうか。

博士たちが捧げたものは3つ、黄金、乳香、没薬でした。

乳香は、フランキンセンスと言います。アロマが好きな方は高価な香料として聞いたことがあるかもしれませんが、当時もとても貴重なものでした。特に旧約聖書では、神に捧げる特別な香りでもあったようです。(出エジプト記30:34)

没薬は、ミルラとも言い、ミイラの腐敗を防ぐために塗っていた香油のようです。

神学者によると、これら3つの贈り物は、黄金はイエスの王権、乳香はイエスの神性やイエスの祭司職を、没薬はイエスの十字架による犠牲を表しているとか。

One Point!! ところで、博士たちは何人でしょうか? そうです。良く見ると、聖書には三人の博士たちが来たとは記載されていません。でも讃美歌でも”We Three Kings of Orient Are” という曲があったり、有名な”牧人羊を(The First Noel)”にも、”Three wise men came from country far”という歌詞が登場したりしますね。それはおそらく、黄金、乳香、没薬という三つの贈り物があったことから、博士たちは三人と想像されて今でも定説となっているのでしょう。

写真:Hassan Pasha on Unsplash


いらだつヘロデ王


さて、世の救い主が現れる、王が生まれると聞いて慌てていたヘロデ王は、どうしたのでしょうか。

“ヘロデは、……ベツレヘムとその周辺一帯の二歳以下の男の子をみな殺させた。”

マタイの福音書 2章16節


イエスを発見できなかったヘロデ王は、「ならば全ての男の子を殺してしまえ」と、イエスが生まれるであろうベツレヘム一帯の二歳以下の男の子を殺させたのです。あぁ、なんと恐ろしい王でしょうか。作品の中でも登場する兵士たちとは、ヘロデ王から殺害を命じられた人たちだったのです。

One Point!! そういえばヘロデ王に限らず、歴史を振り返るとヘロデ王と同じような権力者は登場します。もしかすると暴力によって人を脅かすという行動は、実は恐れを抱く人の心理的現れなのかもしれません。


以上、『もう一人の博士』の背景にある聖書のストーリーを簡単にご紹介しました。聖書には四人目の博士がいたとは書いていませんが、三人の東方の博士以外にもう一人、イエスに会いに来ようとした博士がいた。その博士が今回の朗読劇「四人目の博士」の主人公アルタバンです。


参照:
聖書 新改訳2017
Bible Navi
バイブルガイド
https://www.findagrave.com/memorial/2952/henry-van_dyke


「第30回青山学院大学同窓祭スペシャルチャリティーステージ【四人目の博士〜アルタバンの旅〜】」
https://aogaku-doso.jp/

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